自戦記第10回。
今回は米長流急戦矢倉です。僕が米長流側ね。
僕は矢倉戦の場合、ガッチリ組み合うのではなく急戦で挑むことが多いです。その理由は主に2つ。
自分から積極的に攻めれることと、先手に作戦を選ばれる前に自分から指したい戦型に誘導できるからです。急戦矢倉はこの2つを満たすことが出来るのでかなりお気に入りです。
まぁ、矢倉の定跡が膨大すぎるので自分の土俵に持ち込もうという考えもあるんですけどね。森下システムとか脇システムとか▲4六銀・3七桂型とか・・・もう多すぎです(笑)
米長流で矢倉をぶっ潰せ!
米長流急戦矢倉を採用した理由は先手でも後手でも出来ますし、5手目▲6六歩と▲7七銀の両方に対応できて実用度が高い戦法だからです。決して「藤森流急戦矢倉」という米長流を紹介した本の購入を無駄にしたくないからではありません(笑)
では、早速その米長流急戦矢倉の将棋を紹介しますね。場所は将棋倶楽部24、11級タブ。相手の方が先手で僕が後手です。
最後はなんと、まさかの王手○○が!
銀が気になる
初手から、▲7六歩△8四歩▲7八銀△6二銀▲4八銀△3四歩▲6六歩△4二銀▲5六歩△5四歩▲5八金右△3二金▲7七銀△4一玉▲7八金△7四歩▲6九玉で1図。
最初は「ん?振り飛車かな?」と思いましたが、結局は矢倉の形になりました。実戦ならではの手順ですね。
1図以下後手が淡々と組み合うなら△5二金右~△3三銀~△4四歩などが考えられますが、僕はそんな組み合う矢倉はやりません(出来ない)。というわけでここらで急戦を狙って駒組みをしていきます。
1図以下、△6四歩▲6七金右△6三銀▲5七銀△7三桂▲4六銀△5二金▲3六歩△8五歩で2図。
△6四歩が急戦を明示した一手です。ガッチリ組み合うタイプの矢倉では△3一角~△6四角と角を移動させる手があるのですが、△6四歩とすると歩が邪魔してそれが出来ません。
とうわけで後手は急戦を仕掛けるしかないわけです。先手はこの歩を突かれたら急戦を意識して駒組みを進めましょう。
2図までの手順で気になるのが、先手が飛車先の歩を突いてないということ。
普通後手の急戦に対し先手はすぐ反撃できるように飛車先の歩を突きます。僕の持ってる米長流の定跡書では飛車先の歩を突いていることを前提としてその後の手順が紹介されているので、2図は僕にとって想定外の局面となりました。
って、定跡通りに進むことなんてほとんど経験したこと無いんだけど。
先手は右の銀を繰り出すのが早いですね。銀を使った攻めを狙っているのでしょうか?
もし2図以下▲3五歩なら△同歩▲同銀△5五歩▲同歩△同角(参考1図)があります。
このあと▲4六銀△2二角が予想されます。形成的には難しいですが、攻めの形が整っている後手が持ち駒の歩を使って先攻する展開になりそうです。
まさかの銀引き
2図以下、▲7九玉△3三銀▲3七桂△4四銀▲6八銀で3図。
▲7九玉は将来の△8八角成に▲同玉と取れるようにしたものだと思いますが、▲7九角や▲2六歩~▲2五歩と攻めの形を整える手もあったかと思います。
△3三銀は次に△4四銀を狙ったもので、これが実現できれば先手の▲3五歩を防ぎつつ△5五歩~△5五銀という攻めがあります。
▲3七桂では▲3五歩と仕掛けられる手を気にしていました。
△同歩▲同銀△3四歩▲4六銀は悔しいので△4四歩ですが、▲3四歩△同銀▲3五歩(参考2図)が予想されます。個人的には桂を跳ねられるよりこっちの方が嫌でした。
しかし実戦は▲3七桂△4四銀となり、気になっていた変化を通り過ぎることに。ふう。
仕掛けられずに済んで一安心。「次の先手の指し手は▲2六歩かな」と思っていたらなんと▲6八銀!これには驚きました。
明らかに手損ですし後手の飛車先交換を許すことになります。
このままでは角が使いづらいので角道を通すための手だと思いますが、後手の飛車先交換と6~8筋の守りが薄くなるのが気になります。
桂頭に注意せよ
3図以下、△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛▲2六歩△3五歩で4図。
飛車先の歩を交換できるならやってみたいところ。そして先手の陣形に気になるところがありますよね。そう、桂頭です。というわけで△3五歩と桂頭を攻めます。
4図以下、▲同銀△同銀▲同歩△3六歩▲3八飛△2七銀▲5八飛△3七歩成で5図。
桂を取ってと金作りに成功しました。5図は後手優勢だと思います。先手はただで桂を取らせるのではなく、▲4五桂や▲2五桂として反撃を狙えばまだまだ互角だったかと思います。
具体的には4図以下、▲4五桂△3六歩▲3八飛(参考図3図)などですね。
参考3図は先手の方が玉が堅いですし、将来▲5三歩や▲3三歩などの桂馬を拠点にした攻めが狙えそうです。
と金と桂得
5図以下、▲6五歩 △8八角成▲同玉 △4七と▲5九飛 △6五歩▲5五歩 △同歩▲5三歩で6図。
後手が優勢だと思いますが先手の方が玉が堅いです。その堅さを活かして攻め合いになると逆転の可能性があるところ。そして6図の▲5三歩は逆転を狙って攻め合いを選んだ手です。
この歩は取るかどうか迷ったのですが、△同金と応じると以下▲7九角△5二飛▲6二銀(参考4図)がかなり怖いです。
この参考4図以外にも△5二飛に対して▲5三角成△同飛▲6二銀(参考5図)も気になるところです。
しっかり受けきれば後手が勝てるかもしれませんが、対局中は自信がなかったので歩を取る事が出来ませんでした。
6図以下、△4二金右▲4五角△3六角▲6三角成△同角▲6四銀で7図。
△4二金右と逃げた手に対して▲4五角が両取りです。一瞬「ヤバッ・・」と思いましたが、「△3六角▲同角△同銀で受かるじゃないか!ラッキーー!」と喜んで角を打ったら先手は角を切っての▲6四銀!
「おいおい、そこまでは読んでないぜ・・・」
角を取らせるわけにはいかないので角を逃げますが、直後に桂を取られた手が飛車に当たるのが嫌ですね。
ちなみに▲4五角では▲7一銀(参考6図)もあります。
△7二飛なら▲8一角、飛車を縦に逃げると▲6二銀成とされてしまいます。△8四飛は▲9五角で困ります。
参考6図はまだ後手が有利だと思いますが、受け間違えると一気に負けそうなので実戦的にはこう指されたほうが嫌ですね。
準王手飛車と王手放置
7図以下、△3六角▲7三銀不成△8三飛▲8四銀打△8一飛▲5五飛で8図。
角を逃げた手に先手は不成で桂を取りましたが、ここは成ったほうが良かったと思います。そのほうが後手の飛車を圧迫しやすいからです。▲8四銀打は飛車を圧迫しようとした手ですがさすがに銀の連続打ちは重すぎるかと。
そして▲5五飛には常に狙っていた筋がありました。先手の玉と飛車がラインに入ってると言えばわかるかな?
8図以下、△2二角▲6四銀不成△5四歩▲3四桂△5五角▲4二桂成△8八角成の王手放置で後手勝ち。
△2二角で準王手飛車が決まりました。
先手は▲6四銀不成と飛車に紐をつけますが△5四歩が決め手。角の効きがあるので飛車を動かすことができません。これで後手は飛車を取ることに成功です。
先手は何とか食いつこうと▲3四桂として両取りを掛けてきましたが、△5五角と飛車を取る手が王手なのが痛い。▲同銀しかないですが△5四金(参考7図)と歩を払った手が桂馬から逃げつつ8四の銀と5五の銀の両取りが掛かっていて後手優勢です。
実戦はなんと先手が王手放置。うっかりでしょうか?ただ、△2二角と打ったあたりで既に勝負が決まったように感じます。
ちなみに△2二角では△3三角としておけば次の▲3四桂が両取りにならずに済んだのでそっちの方が良かったかと思います。
まとめ
先手が飛車先の歩を保留するという通常の米長流急戦矢倉とは違う将棋になりましたが、先手はすぐ反撃できるようにするためにも定跡通り飛車先の歩は伸ばすべきだと思います。
とは言っても玉の堅さは先手が堅いので、先手は後手の陣形の隙を狙えば十分互角以上に戦えると思います。参考4図が良い例ですね。
急戦矢倉は先攻できる利点はありますが玉が薄いという弱点があるので、少しリードしたくらいでも安心できないと改めて感じました。中途半端に攻めると悪くなってしまうので、攻めが止まったら負けると思って指したほうがいいかもしれません。
では、今回のフラ盤です。
(棋譜を見やすい将棋盤で表示するために,Fireworks さんが作成されたアニメーション付棋譜再現プレーヤー 「フラ盤」を使用させていただいています.)
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