将棋のほとんどの戦型は序盤の数手(10手以内)である程度決まります。
わけのわからない奇襲戦法や力戦型は例外ですが、序盤の相手の指し手とこちらの指し手次第でどのような展開になるかが予想できます。
今回はその戦型予想をたったの4手で判断する序盤の手順を紹介します。
あ、先に言っておきます。長くなるので前編と後編に分けます。
▲7六歩から始まる戦型予想
将棋の初手はいくつかありますが、僕の経験上一番多いのは▲7六歩。次に▲2六歩で、その次に▲5六歩といったところです。多分ほとんどの人がこんな感じだと思います。
これら以外にももちろん考えられるところですが、今回はこの3つの初手を前編と後編に分けて検証していきます。
あと、違う初手でも指し方によっては同一局面になる場合がありますが、今回は一般的に多い手順、自然な手順を紹介します。全ての変化手順まで考えると頭がパンクしちゃうので(笑)
では一番多い▲7六歩からいきましょーー!
▲7六歩△8四歩の場合
先手の▲7六歩に対し後手が△8四歩と飛車先の歩を突きました。この局面から考えられる戦型は以下の通りです。
[colored_box color=”red” corner=”r”]・矢倉
・角換わり
・先手中飛車(向かい飛車)対後手居飛車
・先手四間飛車対後手居飛車[/colored_box]
1図で▲6八銀△3四歩した局面です。矢倉模様の将棋になることが予想されます。
先手はまだ居飛車か振り飛車か決まっていませんが、ここで▲7七銀としたら矢倉確定です。
1図では▲6六歩~▲5六歩とするのが一番多い指し方。まだ居飛車か振り飛車かわからないですが、先手が居飛車で指すならいずれ▲4八銀や▲7八金、▲2六歩とすることになります。
これらの手を指してから飛車を振ると駒組みが難しくなるので、先手はこれらの手を指したら矢倉を目指すのが自然です。
1図で▲2六歩△8五歩とした局面です。角換わりになるのが予想されます。
このあと▲7七角△3四歩▲8八銀△3二金▲7八金△7七角成▲同銀となれば角換わりですね。
ただ、後手が角を交換するかしないかは自由なので、△7七角成のところで△4四歩と角道を止める手も考えられます。こうなると矢倉っぽい将棋になります。
「矢倉は好きだけど角換わりはちょっと・・・」という人はやってみる価値は十分あると思います。
1図で▲5六歩△8五歩とした局面です。先手は中飛車か向かい飛車にする可能性が高いです。
一応先手が居飛車にする可能性もなくはないですが、居飛車にするなら△8四歩に対して▲2六歩で角換わりを目指すか▲6八銀として矢倉を目指すのが自然です。
4図のあと先手は▲7七角として中飛車か向かい飛車を目指すことが多いです。
1図で先手が四間飛車に構え、後手が△8五歩と飛車先の歩を伸ばした局面です。この時点で先手の振り飛車対後手の居飛車が確定です。
ただ後手はまだ角道を開けていないので、ここから飯島流引き角戦法にすることができます。
あと、今回先手は3手目に▲6八飛と四間飛車にしましたが、▲7八飛として三間飛車に構えるのも十分考えられるところです。
▲7六歩△3四歩の場合
先手が角道を開けた手に対し後手も負けじ?と角道を開けた局面です。アマチュア間では2手目△8四歩よりもこちらが圧倒的に多いです。
この局面から予想されるのが以下の戦法、戦型です。
[colored_box color=”red” corner=”r”]・横歩取り
・後手一手損角換わり
・ゴキゲン中飛車
・ノーマル振り飛車
・ウソ矢倉
・角交換振り飛車
・相振り飛車
・石田流三間飛車
・坂田流向かい飛車[/colored_box]
など色々あります。多すぎです。多すぎてここから先を書くのを考えると憂鬱ですが頑張ります(苦笑)
▲7六歩△3四歩▲2六歩の場合
6図から▲2六歩△8四歩とした局面です。横歩取り模様ってやつですね。
ただ先手が横歩を取らないで避ける手順はいくつかあるので、後手としては先手が避けた場合の対策も用意しておく必要があります。
例えばこの6図の局面から▲2二角成△同銀となれば、先手は一手損ではありますが無理やり角換わりにする事ができますし、▲6六歩と角道を止めればウソ矢倉にすることもできます。
6図から▲2六歩△3二金とした局面です。後手の一手損角換わりが濃厚ですが、坂田流向かい飛車にする変化もあります。
一応、横歩取りや矢倉も可能性としてはあります。
先手が角換わりや坂田流向かい飛車に自信がない場合は8図で▲6六歩と角道を止めて矢倉にすることも考えられますが、そうすると後手は飛車先不突きで右四間飛車にすることができます。それはそれでちょっと面倒そうですね。
6図から▲2六歩△5四歩とした局面。先手の居飛車対後手のゴキゲン中飛車になりそうな感じです。
ここから▲2五歩△5二飛となればゴキゲン中飛車確定。
先手は超速、超急戦、一直線穴熊、丸山ワクチンといった対策を選び、後手がそれに対応するという将棋になります。
6図から▲2六歩△4四歩と角道を止めた局面です。振り飛車模様の出だしですが居飛車も十分考えられます。
ただ後手は角道を止めているので、自分から積極的に仕掛けるのは難しいです。じっくり組んでから戦うのを目指した手と言えますね。
先手としては後手が居飛車でも振り飛車でもどっちで来てもいいように対応する必要があります。
6図から▲2六歩△4二飛とした局面です。角交換四間飛車の出だしですね。
ここから互いに玉を囲ってから戦いが始まります。後手はタイミングを見て角を交換しにいきますが、あえて交換せずに角道開けっ放し状態のまま指すこともあります。
互いに角の打ち込みを気にしなければいけないので、ノーマル振り飛車に比べ序盤は神経を使う展開になりやすいです。
6図から▲2六歩△8八角成とした局面です。
後手がいきなり角交換を目指した手で昔は手損するので「ありえない手」とされていましたが、現在は「手損?別にいいんじゃないの?」とヤケクソ気味・・・じゃなく序盤の考え方が変化した結果普通に指されるようになりました。
12図からは一手損角換わり、角交換四間飛車、ダイレクト向かい飛車があります。
▲7六歩△3四歩▲6六歩の場合
6図から▲6六歩△8四歩とした局面です。先手が角道を閉じ、後手が飛車先の歩を突いたところですね。
ここから先手は▲6八銀として矢倉を目指すことも出来ますし、▲6八飛と四間飛車にすることもできます。ただ、角道を閉じているので自分から急戦を仕掛けるのは難しいです。
ちょっと専門的な話になりますが、後手は先手の石田流が嫌なら13図の局面に誘導し、通常の矢倉が嫌なら次で紹介する14図を目指します。
6図から▲6六歩△6二銀とした局面です。後手の居飛車はほぼ確定ですが、先手はまだ居飛車振り飛車どちらもありえます。
後手は飛車先の歩を突かずに先に△6二銀としているので、右四間飛車にしたとき通常の形よりも一手早く攻める事が出来ます。
これにより先手が矢倉を目指すのをけん制する事ができます。もし先手が矢倉を目指すと通常より一手早い右四間飛車を受けなきゃいけないですからね。
ただ、14図で先手は石田流にすんなり組む事が出来るので、後手は石田流対策が出来てないとこの局面に誘導するのは得策とは言えません。
6図から▲6六歩△3二飛とした局面です。後手が早々と飛車を振りました。
後手の振り飛車は既に確定していますが、先手はまだ居飛車も振り飛車も可能です。
ただ先手は既に角道を閉じているので、居飛車で指すと持久戦でじっくりという展開を目指すことになります。対して後手は角道が開いた状態なので、通常の振り飛車よりも攻撃的に駒組みを進める事が出来ます。
先手がそれを不満に感じるなら、15図で先手は相振り飛車にするのが考えられます。
とはいっても先手は角道を閉じてて後手は角道を通したままなので、相振りになっても後手が攻めて先手が受身になるという展開になりやすいです。
この△3二飛が優秀なので、プロ間では3手目に▲6六歩とする手が減少傾向になっています。
6図で▲6六歩△5四歩とした局面です。
後手は中飛車をチラつかせていますが矢倉にすることも可能です。
ただ、矢倉にするなら▲6六歩には△8四歩とするのが自然です。なぜなら△5四歩には▲7五歩として石田流を目指す手が先手にはあるからです。
16図からは互いに居飛車も振り飛車もあるので戦型予想は難しいですが、もし先手が▲7五歩と石田流を目指してきたら後手は相振り飛車にするか中飛車左穴熊が考えられます。
後編へ続きます。
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