中飛車左穴熊とその本の評価と感想

「相振り革命」などの相振り飛車の定跡本で有名な杉本昌隆先生。

そんな杉本先生の「対振り革命 中飛車左穴熊」を読んだので、それについて僕なりの評価をしていきたいと思います。

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中飛車左穴熊戦法の特徴

まず、中飛車左穴熊という戦法の説明をサラッと簡単に紹介します。

普通中飛車は玉を右側に囲います。しかしこの戦法は左穴熊と言っている通り玉を左に囲い、しかも穴熊を目指すというかなり欲張った戦法です。

 

初手▲5六歩からの先手中飛車で指すことが多いですが、後手番でも応用できます。

戦法の分類は居飛車なのか振り飛車なのかよくわからない戦法で、東大流中飛車左穴熊とも呼ばれていますね^^

相手の速攻で穴熊が未完成のまま戦うこともありますが、基本的には穴熊に組んでドカンと開戦する戦法です。

 

なぜ左側に囲う必要があるのか?

これは相振り飛車になった場合、中飛車は玉を右に囲うと不利だからです。

いや、別にアマチュア初段前後であればあまり関係ない差だと思うんですが、プロレベルでは相振り飛車で中飛車は勝ちづらいという印象があるんですね。

勝ちづらい理由は主に二つ。

 

1.左の金が守りに使いづらい

2.攻めている場所が敵玉から遠いのに対し、相手が攻める場所はこちらの玉に近い

 

1は中飛車特有の短所で、左の金を玉の守りに使いたくても飛車が邪魔をして移動させづらいんですね。なので玉形が相手よりも弱いまま戦いになることがあります。

 

2はお互いの攻めている場所の関係。

中飛車の対振り飛車はほとんどが三間飛車か向かい飛車です。
この2つは中飛車よりも相手玉に近い場所を攻めることが出来ます。

もし、同じタイミングで攻め合うということになると、敵玉に近い場所を攻めているほうがより早く相手玉にたどり着くということになるんですね。

しかも先ほどの金を守りに使いづらいというデメリットも合わさるので、より厳しい攻めを食らってしまうことになります。

 

以上のことから相振り飛車になると中飛車は勝ちづらいという印象があったので、相手が早々と中飛車を宣言したら相振り飛車に誘導すればなんとかなるという状態が続いていました。(あくまでプロレベル)

特に初手▲5六歩として先手中飛車を目指す場合はこの問題が常にあります。

 

「先手中飛車を指したいけど、相振りに誘導されるのは嫌だから・・・」

 

という振り飛車党は初手▲5六歩と突きづらい状況になったんですね。

居飛車党ですら相振りにするということもあったので、それほど中飛車側は苦しいということが分かります。

逆に言えば中飛車相手に居飛車では勝ちづらいとも捉えることが出来ますね^^

 

中飛車左穴熊の誕生

これまで中飛車党は相振りにされるのが嫌で初手▲5六歩と突きづらかったのですが、その問題を解決したのが中飛車左穴熊です。

相振りになると囲いの強度でも攻めの速度でも負けていましたが、これは玉を右に囲うから生じる問題なんです。

 

「だったら左側に囲って相手の攻めから遠ざかれば何とかなんじゃね?」

 

という発想が生まれ、実際なんとかなっているというのが今の状況です。

 

わかりやすくこの戦法が生まれた背景を紹介するとこんな感じ。
[colored_box color=”red” corner=”r”]先手中飛車に対して居飛車勝ちづらい

だったら居飛車で戦うのではなく相振りに誘導しよう

相振りでは中飛車勝ちづらい

中飛車側は相振り模様になったら玉を左に囲って戦おう(今ココ)[/colored_box]

 

この戦法が登場したおかげで初手▲5六歩と突きづらかった問題が解消し、先手番で中飛車を目指す振り飛車党が復活傾向にあります。

 

ちなみにこの戦法の流行により、居飛車党が相振りを目指して飛車を振るのに対し、中飛車側はそれを避けて左に玉を囲うので、居飛車党が振り飛車で戦い振り飛車党が居飛車っぽい陣形で戦うことが多くなりました。

駆け引きの末立場が逆転するってなんだか不思議ですね。

 

「対振り革命 中飛車左穴熊」を読んでみて

さて、前置きがちょっと長くなってしまいましたね。
簡単にと言ったのに長くなって申し訳ない(笑)

というわけで早速本の評価に移りたいと思います。

 

対振り革命 中飛車左穴熊 (マイナビ将棋BOOKS)


今現在(2014年12月)のところ中飛車左穴熊を専門に扱っている本はコレのみなので、重点的に定跡を学びたい人はこの本は必須です。

先手番だけでなく後手番での指し方や相手が速攻を目指したときの対策法も紹介されているので、まずこの本だけで概要を学んで実戦で指すということはできます。

しかし誕生したばかりの戦法なので、まだまだ変化の余地が生まれる可能性があります。
有力な対策が生まれるのは時間の問題といえるでしょう。

 

実際に指してみての印象としては速攻を仕掛けられると金銀が左右にバラバラになりやすいので、そこを狙われるとちょっと指しづらいなーと感じました。

そしてこれは僕の技術的な問題ですが、穴熊の経験値がまだまだなのでせっかく組んだとしてもどうやって攻めをつなげればいいかがわからず、途中で攻めが切れてしまうことがありました。

細い攻めをつなぐ技術が必要なので、そこはどんどん指して身に着けるべきところだと痛感しましたね(苦笑)

あと、相手の指し方によっては相居飛車のような将棋を強要させられる場合があるので、ある程度相居飛車の指し方にも慣れておく必要があると思います。

 

この本が必要な人と必要でない人

最後にこの本が必要な人とそうでない人を僕なりに分けました。
あなたに必要かどうかを判断する目安としてください。

 

必要な人

中飛車党。当然ですね(笑)

先手中飛車に対して振り飛車で対応する人

先手石田流対策に困ってる人(先手石田流に対して中飛車左穴熊が使えるため)

 

あまり必要ない人

中飛車で相振りになった場合、玉を右に囲っても全然問題ない人

先手中飛車に対し堂々と居飛車で対抗する人

先手石田流相手に堂々と居飛車で立ち向かう人(もしくは相振り)

 

この戦法のおかげでますます居飛車と振り飛車のボーダーラインが薄くなった気がします。

もしかすると数十年後は「居飛車党」「振り飛車党」が死語になっていたりして。・・・ってそりゃないかな。

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コメント

  1. polastar より:

    この戦法モドキを指し始めたころ(もう20年くらい前)は単純に真ん中に飛車振って、相手の玉が行く方(もしくは飛車が居ない方)へ自玉を囲って勝負という単純なものでしたが(ちなみにどっちに囲っても美濃囲いか舟囲い(右でも舟囲いというのかはギモン)考え方としては「飛車先突破されてる間に(相手玉に近い5筋)破ればギリギリ勝てるんじゃね?」というもの。今でも他人(主に初心者)に中飛車勧める時は同じこと言ってますけどw

    中飛車で左に囲うのってやっぱり穴熊まで行くのが主流なんでしょうねえ。

    でも、相手の囲いってオイラレベルだと美濃が多いので、堅さ勝ちの穴熊って結構難しいので、7八玉型で急戦挑んだり、相手が矢倉や銀冠などで盛り上げてこないようなら8七玉型や玉頭位取りなんかも悪くないんですよねえ、

    などと言いながら急戦じゃない時は穴熊に組んでますけどw

    • ふみたん より:

      polastarさん、どうもです!

      やはり穴熊の方が堅さで勝るので、組めるなら堅い穴熊の方が人気なんだと思います。
      ただ、相手の陣形によっては舟囲いのような簡素な囲いで速攻を仕掛ける手もありそうなので、そこらへんは今後この戦法が多く指されるにつれて発見されそうですね。

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